産繊新聞社

呪術要素を持つ「水引暖簾」

呪術要素を持つ「水引暖簾」

暖簾の地色として最も多く使われた色が「紺」と「藍」である。藍で繊維を染めるとき回数を重ねることで「藍」から「紺」へと変化していき、最終的に「黒」に近い色になる。これを「止め紺」と呼ぶが、昔の人の感覚では、「紺」や「藍」は「黒」と同じに見えていたようだ。
ところで間口いっぱい軒下にぶら下げた「暖簾」のことを「水引暖簾」と呼ぶと前述したが、何故この名称になったのか記した書物は無い。このことについて筆者独自の考察を入れておきたい。
社寺の大祭や落慶式に「五色幕」が張られるが、これは陰陽五行の五色(青、赤、黄、白、黒)に由来しているといわれている。五色は木、火、土、金、水の五原素・五気に置き換えられこれらが時間・空間を統合し、宇宙そのものを表現するというのが陰陽五行の根本である。これを象徴する空間が相撲の土俵で、その上の屋根には「紺」の幕を張るが、これを「水引幕」と呼んでいる。目的は土俵上で力士がぶつかるときに起こる熱気(火)をしずめるためで、「火を剋するのは水」という陰陽五行の相剋の理が基になっている。水は陰陽五行で黒。前述の通り、昔は黒と紺は同色と見られることがあり、筆者は「水引暖簾」という名称がここから派生していると考えている。このことを考えれば「水引暖簾」を軒先に掛けるようになったのは「火を鎮めるためのまじない」、つまり防火の呪術ではないかと推測できる。この視点でいけば、聞きなれない「水引」という言葉の意味も解るし、色に紺を使った意味も頷けるのである。
ただ、暖簾の地色に使われた色は「藍」と「紺」以外にも「縹(はなだ)」「柿」「茶」「浅葱(あさぎ)」「白」などがあり、これらは呪術とは関係がなく、どちらかといえば業種に固定されたといえよう。例えば「柿」色は、もとは島原や吉原などで「太夫」と位置づけられた遊女がいる店にだけ許された色であったという。歌舞伎の定式幕は「紺」と「緑」とこの「柿」色。遊興との結びつきが強い色であることがわかる。また「白」は菓子店や薬商に多かった色で、砂糖から来ているとも言われる。砂糖は昔、薬に位置づけられていたという。

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