産繊新聞社

昭和32年

昭和32年

社会の出来事
 神武景気からなべ底不況へと移行する過渡期の昭和32年。鳩山首相に代わって就任した石橋湛山首相が全国遊説の後に自宅の風呂場で倒れた。軽い脳梗塞だったが「政治的良心に従う」と在任65日で退陣、日本国憲法下において、国会で一度も演説や答弁をしないまま退任した唯一の首相となった。代わって2月25日、首相に岸信介が就任、石橋首相が日中米ソ平和同盟を主張し共産圏寄りだったのに対して、岸首相はアメリカ寄りの立場をとり、現在のアメリカ追随路線はこのとき出来上がった。6月21日にはアイゼンハワー大統領との首脳会談で「日米新時代来る」の共同声明を発表している。下半期に入ると不況色が強まり、経済白書の副題には「速すぎた拡大とその反省」という文字が躍った。 
 9月に大阪市に「主婦の店ダイエー」が開店、10月に入ると東京八重洲の大丸で「3時間の百貨店勤め」というキャッチで『パートタイマー』(新語)を初募集するなど、新しい雇用形態が登場した。10月に5千円札が登場したほか、年末にNHKと日本テレビが、カラーテレビの実験放送を開始している。世相ではロカビリーブーム、家出ラッシュなど。「お月さん今晩は」(藤島桓夫)、「東京だよおっ母さん」(島倉千代子)、「チャンチキおけさ」(三波春夫)、「有楽町で逢いましょう」(フランク永井)などがヒットした。
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業界の出来事
 昭和32年上半期は、中小企業団体法案がまとまるか否かに注目が集まった。この法律は、過当競争のため経営が苦しくなった中小企業者が、商工組合を作り、生産・販売の調整事業ができることが大きな特徴であった。一方で中小企業者が法律によって企業努力を怠り、カルテルなど価格協定に走る懸念があることから、公正取引委員会から異論が出、大企業からも法律に盛り込まれた組合への強制加入や組合交渉権の強化に反発が高まった。最終的には、主婦連や消費者の反発もあって成立せず、中小企業者にとって統制下時代から夢であった法律はまとまらなかった。
 当時は高圧ポリエチレンが主流であったが、ドイツのテークラー博士がトリエチルアルミという有機金属化合物を使って常圧ポリエチレン技術を開発した。自由に顔料を混ぜて着色でき、使用温度も百二十五度まで耐えられるメリットがあった。また高圧反応塔など大きな設備投資が必要ないことから、価格が安くでき、普及していた塩化ビリニデン繊維にとって脅威となる技術として注目された。また東洋レーヨンと帝国人造絹絲はイギリスのインペリアル・ケミカル・インダストリー社からテトロン製造技術を輸入、「ありがとう 石油から生まれた新しいせんい 私の名はテトロンと決まりました」というキャッチコピーで展開した。
 こうした合繊時代の到来の中で、先行していた旭化成は、まず西日本で協力会を結成した。2府24県の有力業者が、11月19日有馬で大懇談会を開催、この席で総代理店の高島㈱高島幸太吉会長は「私は戦前、戦後と帆布一筋五十年生きてきたが、このサランテントはまさに画期的なもので、業界の様相を一変させた。毎年販売量は倍増しており、これからも目的達成のため老骨に鞭打って努力していきたい」との趣旨で挨拶を述べている。この協力会の結成は、メーカーと縫製業者の距離を縮め、川上と川下を繋ぐ新しい試みでもあった。
 上半期に東京・大川工業㈱がOK式テントを発売した。これまでのパイプテントは柱を立てた後、棟のパイプを差し込む作業が必要となっていたため、地上約二m七十㎝の高さで作業をする必要があったが、OK式は柱の部分を折りたたんだ状態で棟のパイプを差し込む作業ができ、作業効率が大幅にアップした。
 業界関連では前年に発足した名古屋帆布製品工業組合(村山賢治組合長)が北区長田町十洲楼で第2回目の総会を開催、高島㈱大阪支店は25周年を記念して3月1日に式典を開催した。
 一方、昭和30年の破綻後、会社更生法の適用を受け再建を目指していた東洋繊維は自主生産体制に戻り、「二ツダイヤ印」帆布の生産を始めた。また、「ハマ印」帆布が好評で、増産体制に移り、大阪帆布、大谷帆布店、津田商店、大一帆布、新興産業、高島大阪支店、広瀬商会大阪営業所の大阪折鶴会が結成された。
 そのほか、大和紡績の「波星」の特約店で組織する波星会メンバーが、九月に大和紡績出雲工場を見学、組合関連では大阪天幕商工組合(森本卯三郎理事長)が京都で、第一帆布縫製組合(橘岩男理事長)が白浜で秋季総会を開催したが、このあたりから両組合の統合の必要性が論議され始めた。また、中小企業団体組織法によって各地で組合結成の動きが活発化している。

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