産繊新聞社

昭和34年

昭和34年

社会での出来事
 前年に第3次南極観測隊が置き去りにしたカラフト犬15頭中、タロー、ジローの無事が確認されたのが、この年1月のこと。「南極物語」というタイトルの映画は今も感動を与えている。3月には「少年マガジン」、「少年サンデー」が創刊した。前年11月に婚約された皇太子様と美智子様の結婚の儀が4月10日、皇居内賢所で執り行われ、朝見の儀に続いて東宮仮御所まで馬車行列が出発、その様子はテレビで中継されたが、その一週間前にテレビ受信契約が200万軒を突破した。ている。7月21日に発表された経済白書で、技術革新・消費革命による景気の回復、産業構造の変革が強調された一方で、イタイイタイ病の原因を追求していた萩野昇医師がその原因を『富山・神岡鉱山の鉱毒』と発表(10月)、さらに水俣病問題で漁民千五百人が新日本窒素水俣工場に乱入し、警官隊と衝突するなど公害問題への関心が高まりだした年でもあった。
 9月26日、25年前の室戸台風をはるかに上回る被害をもたらす伊勢湾台風が猛威を振るった。死者・行方不明者5,098人、被災世帯35万4千世帯、建物全壊・流失あわせて約3万9千棟。特に台風の進路の岐阜、三重、愛知県は壊滅的な被害であった。
 ファッションではチェック柄、ミッチースタイル、Vネック、ササールコート、キューピットライン、細身シルエットが流行した。色は慶祝カラー、ザイラー・ブラック、チャコールグレーが人気に。オートバイに革ジャンバーの「雷族」が流行したり、神風タクシーが横行した。歌では、「黒い花びら」(水原弘)、「南国土佐を後にして」(ペギー葉山)、「人生劇場」(村田英雄)がヒットした。スポーツでは4月26日王貞治が後楽園球場でプロ入り初ホームラン、6月25日には長嶋茂雄が展覧試合でサヨナラ本塁打を放った。
 そのほか今で言う合コンのハシリ、男女合同ハイキング「合ハイ」が東京を中心に大学生間でから流行した。テレビでは「スター千一夜 」(フジテレビ)、「少年ジェット」 (フジテレビ)、「番頭はんと丁稚どん」(毎日放送)、「おかあさんといっしょ」(NHK)などが人気に。
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業界での出来事
 前年の6月を景気の谷として始まった岩戸景気。第18回オリンピックの開催地として東京が決定したこともあり、日本全体が42ヶ月という長きに亘り、好景気に沸いた。この年の1月より、メートル法が施行されたが、業界は、その前年の秋口より順次、合繊、ビニロン帆布、綿帆布を全国規格に統一してきたため、混乱なくスムーズに移行された。
 広告で旭化成の「カシミロン」の歌が流行ったが、この「カシミロン」を巡って業界の中でひと悶着が起こった。「カシミロン」はアクリル系の合成繊維であるが、この製造工程に関する特許において東洋紡と日本エクスランが特許庁に異議の申し立てを行ったのである。「カシミロン」は溶剤に精製された硝酸を使用するため、原価が安く価格競争力があることが大きなメリット。ところがこの硝酸法は昭和十六年に東京工業大の神原教授が「シンセン」という名前でアクリル系合成繊維を作ったときとよく似た方法で紡糸、さらにアメリカでも工業化が見られていたことから、東洋紡・日本エクスランが「公知の事実」として異を唱えたのである。
 旭化成のサランに続けと帝人及び帝人商事はテビロンテントの求評会を福井県、石川県、兵庫県、東京都、神奈川県と全国行脚で行い出したのがこの年。また、都化工㈱は数年前よりコンパウンド防水の赤外線乾燥による強力な防水度を確認していたが、設備の改良と技術革新によって綿・化合繊を問わず注文が殺到しだした。耐水度の持続性、防腐、変色が少ない、縮みがないなどの特長が評価された。
 岩戸景気の真っ只中、綿糸の高騰から紡績筋は一斉値上げを打ち出し綿帆布価格が高騰した。強気の紡績メーカー四社(東洋紡、大和紡、敷島帆布、東洋繊維)は、綿帆布の名で粗悪品が出回り、良心的な取り扱い業者が迷惑を蒙っているとして、①通産省指定のJSIFマークを刷り込む、②一級品の染色防水については各工場の協力を得て優秀な加工を施し施工後もマークの線明度を保持できるように要請する、③パンフレット、ポスター、新聞、広告などで末端まで運動の浸透を図る―などのPR活動を関西重布会とともに行なった。
 物流の中で海運の位置づけが高かったこの当時に開かれた、海運専門の展示会「伸び行く海運船造展」には当業界から敷島帆布、大和紡、倉敷レーヨン、東洋レーヨンなどがハッチカバー、ナイロンロープ、帆布、テトロンヨット地などを出展した。海運によって帆布業界が潤っていたことを物語る一方で、業界大手の太陽工業㈱は、FRP成型品「サンボラック」を研究・開発する太陽化学㈱を設立、次の時代を見据えて積極的に設備投資する企業も見られた。
組合関連では、3月3日付け中小企業団体組織法によって福岡県帆布製品工業組合が大塚万次理事長の下で正式に認可された。また3周年を迎えた神奈川県天幕雨覆商工組合は、本格的組合活動の必要性に迫られたことから、3月20日協同組合を設立、また広島市、呉市と山口県の一部業者によって中国帆布製品懇話会が結成された(会長は原信嗣氏)。訃報では1月25日に大谷弥三郎氏が急逝された(享年76歳)。

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