産繊新聞社

没後、その功績を称える

没後、その功績を称える

明治13年(1880年)明治天皇が巡幸の際、駕を神戸にとめられたとき、松右衛門の事蹟を御耳にされ、特旨をもって追賞を賜ったという。
『宣令書 兵庫県下高砂東宮町 平民工楽松重郎
其方祖父工楽松右衛門、帆布を創製し諸港修築に従事し、力を公益に尽くし候段奇特に付特旨を以て為追賞金二十五円下賜候事  明治十三年七月二十一日 三条太政大臣』
文面の工楽松重郎は即ち三世松右衛門のことである。
また、明治16年(1883年)10月には、大阪に開設された「十二府県連合織物外四品共通会」を機に再び追賞の栄を賜った。
『追賞授与書  兵庫県下播磨国高砂東宮町 故・工楽松右衛門 一金 十五円
天明五年四月創テ堅質ノ帆布ヲ織リ以テ従前ノ製ニ代フ爾来環海ノ地大抵其利ヲ享ケ松右衛門帆ノ名長ク伝フ其世ニ益スル事頗ル大ナリ因テ特ニ之ヲ追賞ス
明治十六年十一月八日 農商務卿正四位勲一等 西郷従道』とある。
越えて大正4年(1915年)の11月には宮内省より特旨を以て従五位が贈られた。
『故工楽松右衛門  特旨ヲ以テ位記ヲ贈ラル 大正四年十一月十日 宮内省』
『故工楽松右衛門 贈従五位 大正四年十一月十日 宮内大臣正三位勲一等男爵 波多野敬直宣』
 〇播陽風土誌―松右衛門の稿
 又東宮町有工楽松右衛門者四代以前松右衛門創製帆布爾来海内大小船舶舶蒲筵用布帆世称松右衛門帆者即是也其子孫皆巧於築港術沿海諸国厚聘迎之明治十年車駕幸大和山城奏上帆布創製之事乃召今之工楽氏有賞褒云横河秋涛謹識

この翌年の大正5年、時の加古郡長は松翁の遺勲を不朽に伝えんとして郷土有志に謀り、松翁の銅像を高砂神社祠畔に建てた。
工楽松右衛門翁銅像碑銘
『工楽松右衛門高砂人成性頗智巧常開物利世為志焉前此本邦船所用帆布脆弱易破巻舒不便工楽松右多年苦心所有発明自織大幅綿布製為帆試用之其家船軽便耐久天明五年置場干二見多雇人製之舟人争購求竟遍布海内呼曰松右衛門帆寛政二年幕府欲開蝦夷地召抵干江戸従吏至択捉嶋築埠頭十月寒甚請帰次年再北竟竣工尋造函館船渠幕府前後賞之賜姓工楽文化六年老中小笠原矣帯幕命将航対馬矣怖風涛傾船室松右聞之以鉄鎖釣室乃無患矣侯大喜又疏開豊前伊田川以漕運彦山巨木盖授其法於土人也至今土人深徳之七年築高砂港藩主酒井矣賞以五口年俸与黄金福山矣欲築干鞆港聞松右名請其藩主雇之松右時罹疾勉強往了事侯大感其篤志饋以三口俸次年八月病竟不起享年七十明治十三年駕巡幸至干兵庫使三条相公賜金追賞之
大正四年 今上行即位之礼 贈従五位盖出於特典也 大正五年十月 橋本徳則撰』
かくて赫々の偉業は顕彰せられ郷土の誇りとなり、全国有縁の士の讃仰の的となり、爾後高砂神社に詣でる人々の胸を打つ幾多の教訓、功績を其の生けるが如き温容に偲ばせつつ相生の松風と共に高砂の名所と謳われていたのであるが、惜しくも昭和の戦陣に赤だすきの出征となり、巨人の面影今いずこ、松林に鳴る櫛風沐雨の中に、台石のみを残して、徒らにうたかたの夢を追うのみとは誠に物淋しき趣である(昭和29年6月、完)
―◇―◇―◇―◇―◇―◇―◇―◇―◇―◇―◇―◇―◇―◇―◇―◇―◇―◇―
昭和41年5月11日、第二次世界大戦の金属供与で解体された工楽松右衛門の銅像再建除幕式が開かれた。銅像は、祖父・首藤充康(本名・武男)の呼びかけで、全国の帆布業者有志が浄財を寄進して再建したものであるが、祖父はこの完成を待たず、昭和40年12月23日に他界した。除幕式では日本帆布製品工業会連合会名誉会長の高島幸太吉氏、同連合会会長の若村三人氏、兵庫県天幕商工会会長の須浪義人氏各氏が松翁の功績を称える挨拶を述べた。碑には「我国帆布製造の始祖、工楽松右衛門翁の多方面に渉る幾多の功績を讃え大正五年郷土の町長他有志相集い銅像を建立するも第二次世界大戦の際国家に献納され今日に至る。此の度翁の遺徳を後世に伝えんがため全国帆布業者有志によりここに再建するものなり。 昭和四十一年五月十一日」の銅版がはめ込まれている。
あれから50年。業界も技術革新が進み今は合繊が主体、綿帆布の需要は衰退した。このこと自体は時代の流れとして割り切れるのであるが、帆布をはじめて作った偉人の存在を業界の若手が知らないことに寂しさを覚える。約半世紀ぶりに祖父の原稿をここに掲載したのは、松右衛門の功績を若手に知ってもらいたいという思いと共に、松右衛門の生き方に学ぶべき多くのことがあると感じたからである。高砂神社の境内にひっそりとたたずむ松右衛門は、今の業界を見て何を感じているだろうか。
松右衛門像 除幕式
高砂神社の松右衛門像   昭和41年5月11日除幕式記念撮影

powered by Quick Homepage Maker 5.1
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional